あどみん帖(2203)
記憶が正しければ2015年秋の終わり頃。まだ夜も明けきらぬ早朝に地域の氏神様(椋本神社)までの往復の散歩を始めた。
帰路の中間くらいにさしかかるあたりで5:30頃。いつもそのあたりで「ゴーン・・・。ゴーン・・・」と、どこからかゆっくり数回鐘を撞く音。田舎町の風情としては似つかわしく、ひんやり乾いた静かな朝の澄んだ空気の中で、遠く、かすかではあるがはっきりと聞こえてくる。
不思議と神社近隣はお寺街と言えるほどお寺が数件密集している。調べてみると自宅周辺もお寺が数件点在するほどお寺の多い地域。とはいえ、こんな朝早く、どこのお寺から聞こえてくるのだろう?
とても気になっていた私はある朝、神社周辺で5:30頃になるよう時間をずらした。
やがて鐘の音が始まる。明らかに音が近く、やはりこのあたりのどこかに違いない。鐘の音をたよりに早足で探しはじめ、いつものルートを外れ、細い路地へ入った先、石垣の上を生垣で囲んだお寺。垣根の切れ目から鐘楼が影絵のように見え、目の前で鐘の音を聞いた。
ようやく鐘の音の出所がわかり、お寺の山門を静かにくぐり、鐘楼下で撞き終わるのを待つ。
そもそも出掛けた先で観光名所的な寺院に立寄るくらいしか寺の敷居をまたぐ経験もなく、しかもまだほとんどの人が寝ているであろう時間帯に、誰もいない真暗な寺の境内に入るという普通ではまず無い経験に少し緊張した。
やがて鐘が撞き終わり、鐘楼の階段を人影がゆっくり下りてくる。姿、形から年を召した方と判断できた。
いつも誰もいるはずがないところに、しかも会った事もない人が居たらさぞや驚く事は想像できたが、階段を下りきったところで「おはようございます・・・」と小声で挨拶すると、当然ながら相当に驚かれた様子で、挨拶を返してくれた。
唐突かつ驚かせてしまったお詫びをし、訪問した事情を話すと、『おお、そうかい』といった感じでご老母と話をすることとなった。
このご老母が、先にご往生された前坊守・山田昭子さん。これが私と存仁寺のであいでした。
<続・不定期にて>